我以外皆我師

「格闘技は誰に教わりましたか？」

そう訊かれると、私は「NさんやEさんに教わりました」と答えることが多い。実際、私が一番長い間師事したのはNさんであり、Eさんからはとても多くのことを学ばせていただいた。名実相伴う優れた格闘家で良き指導者であった両氏には本当に感謝しており、両氏と出会えたことは幸運であったと思っている。

一方、私は若い頃から我以外皆我師（注1）という思いが強く、これは今でも変わっていない。（注2）　自分より十も二十も若い人を質問攻めにして、困った顔をされることもある（笑）　また、初級者などの動きが勉強（反面教師など）になることもある。

これは格闘技に限った話ではない。とくに格闘技をやめてから再開するまでの約10年の間に行っていた修練（注3）においては、格闘技におけるNさんやEさんのような存在と出会うことができず（注4）、必然的に我以外皆我師の修練となった。もし私に我以外皆我師の精神がなければ、今頃は痛々しい似非者に成り果てていたかもしれない。

私の格闘技のレベルはNさんやEさんの足元にも及ばない。故に当団体のメンバーには我以外皆我師の精神を以て格闘技に臨んでもらいたいと思っている。

注

1）ググれ。

2）自灯明的な側面が重要であることは言うまでもない。

3）飽く迄も実践に立脚した仏教修行等々。

4）逆に、態度や言説は立派だが実践や能力が伴わない、間違いを認めない、屁理屈で正当化する、論破されても勝ち誇った態度を示す……というような人とはよく出会った。なお、道徳の文脈では非難や軽蔑の対象とされ、精神衛生の文脈では治療や介護の対象とされる彼らも、我以外皆我師の文脈においては優れた反面教師であり重要な存在である。